JACK休憩所

慶應義塾大学ジャパンアニメカルチャー研究会のブログ

ピ蔵十夜【第四夜】

 

 

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こんな夢を見た。

 

 広い部屋の真ん中に祭壇のようなものを据えて、その周りにぬいぐるみやらアクリルスタンドやらが並べてある。祭壇は黄色に染まっている。片隅には祭壇を前にして友人が一人で祈っている。

 友人は激昂しているのか絶望しているのかで、赤くなったり青くなったりしている。その上祭壇の黄色が反射して、すわ顔中でこの世の色全てを再現しようというのかと思えるほどである。友人は現時点でどれほど課金したのだろうと思った。ところへ裏の筧からiTunes Cardを手に持った別の友人が、祈る友人にカードを渡しながら、

「御前さんはツイステにいくらつぎ込んだんだね」と聞いた。祈る友人は、

「いくらか忘れたよ」と澄ましていた。 

祈る友人(以後祈祷者)は茶碗のような大きなもので水をぐいと飲んで、そうして、ふうと長い息を吹き出した。すると友人が、

「御前さんの推しは誰だね」と聞いた。祈祷者は長い息を途中で切って、

「ラギーだよ」と云った。友人は腕を組んだまま、

「課金するのかね」とまた聞いた。

すると祈祷者が、また茶碗のような大きなもので水をぐいと飲んで前のような息をふうと吹いて、

「課金するよ」と云った。

「天井までかい」と友人が聞いた時、ふうと吹いた息が、床に散らばる使用済みのiTunes Cardをさらに散らかした。

 祈祷者が祭壇の前に立った。自分も後に続いた。浅黄のズボンを穿はいて、浅黄のTシャツを着ている。靴下も黄色い。何だか皮で作った靴下のように見えた。

 祈祷者が祭壇の中心に立った。祈祷者は笑いながら腰からiPhoneを出した。それを供物のように恭しく掲げた。そうして祭壇の中央にあるラギーのアクリスタンドの前に置いた。それから先ほど受け取ったiTunes Card一万円分をチャージした。

「今にこの一万円がラギーになるから、見ておろう。見ておろう。」と繰り返して云った。

 自分は一生懸命画面を見ていた。友人も見ていた。

「見ておろう、見ておろう、好いか」と云いながら祈祷者が笛を吹いて、祭壇の周りをぐるぐる廻り始めた。自分はiPhoneの画面ばかり見ていた。けれどもラギーはいなかった。

 祈祷者は笛をぴいぴい吹いた。そうして祭壇の周りを何遍も廻った。爪立てるように、抜足をするように、ラギーに遠慮をするように、廻った。怖そうにも見えた。面白そうにもあった。

 やがて祈祷者は笛をぴたりとやめた。そうして、もう一枚あった一万円分のiTunes Cardを、ちょいとつまんで、またチャージした。

「こうしておくと、iPhoneの中でラギーになる。今に見せてやる。今に見せてやる」と云いながら、祈祷者が真直に歩き出した。玄関を抜けて、細い路を真直に下りて行った。自分はラギーが見たいから、細い路をどこまでも追ついて行った。祈祷者は時々「今になる」と云ったり、「ラギーになる」と云ったりして歩いて行く。しまいには、

 「今になる、ラギーになる、

  きっとなる、グリムが立つ、」

と唄いながら、とうとうコンビニの入り口にまで出た。ここで休んでラギーを見せてくれるだろうと思って外で待っていると、祈祷者は手にざくざくiTunes Cardを持って出てきた。そんなにたくさんの一万円をiTunes Cardに変えることができるなら、そこからさらにラギーに変えるのも容易だろうと思っていると、祈祷者は

 「今になくなる、貯金がなくなる、

  人でなくなる」

と唄いながら、どこまでもガチャを引いていた。そうして何回目の天井かわからなくなった時に、祈祷者は全身がわなわな震えてiPhoneを取り落とし、画面が割れてしまった。自分は、割れた画面からラギーが出てくるのを待っていたけれども、とうとう何も出てこなかった。

 

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