JACK休憩所

慶應義塾大学ジャパンアニメカルチャー研究会のブログ

ピ蔵十夜

第一夜

 

 こんな夢を見た。

 

 2年前、腕組みをしてテレビの前に座っていると、アニメおそ松さんが放送されていた。6つ子はあいも変わらず自由闊達、やりたい放題、とても2期最終話だとは思えない。しかし、番組表では、最終話とはっきり書いてある。自分も確かにこれで終わりかと思った。そこで、そうかね、もう終わりかね、と3期を示唆するものがないか探してみた。そのうちに放送は終了し、テレビの画面はただ一面に真っ黒であった。その真っ黒な画面に、自分の姿がみすぼらしく浮かんでいる。

 自分は透き通るほど深く見えるこの黒い画面を眺めて、やっぱり終わるのかと思った。それで青い鳥に「おそ松さん 3期」と聞いてみた。すると青い鳥は静かな声でもしかしたら続くんじゃないかと云った。

 じゃ、いつ頃3期が始まるんだいと聞くと、鳴かなくなった。自分は黙ってスマホの画面から顔を離した。腕組みをしながら、これはもしかしたら本当に終わりかもしれないなと思った。

 しばらくして、青い鳥がまたこう云った。

 「あの6つ子のことを忘れないでください。また逢いにきますから。」

 自分は、いつ逢いに来るかねと聞いた。

 「日が出るでしょう。それから日が沈むでしょう。それからまた出るでしょう、そうしてまた沈むでしょう。――赤い日が東から西へ、東から西へと落ちて行くうちに、――あなた、待っていられますか」

 自分は黙って頷いた。青い鳥は静かな調子を一段と張り上げて云った。

「リアタイで観てるのだからもう夜も遅いです。寝てください」

 自分はただ待っていると答えた。すると、バッテリー残量が少なくなっていますとスマホに表示された。充電しなければと思ったら、プツリと切れてしまった。

――もう充電がなくなっていた。

 

 自分はそれからおそ松さんBlu-rayを見ながら待った。面白いシーンを見ては笑い転げた。そのうちに青い鳥の云った通り日が東から出た。大きな赤い日であった。それがまた青い鳥の云った通り、やがて西へ落ちた。赤いまんまでのっと落ちて行った。一つと自分は勘定した。

 しばらくするとまた唐紅の天道がのそりと上って来た。そうして黙って沈んでしまった。二つとまた勘定した。

 自分はこう云う風に一つ二つと勘定して行くうちに、赤い日をいくつ見たか分らない。勘定しても、勘定しても、しつくせないほど赤い日が頭の上を通り越して行った。それでも3期発表がまだ来ない。2019年に映画が公開されていたけど、やっぱりあの映画おそ松さんで完結してしまったのだろうか。しまいには、製作陣はおそ松さんのことなんて忘れてしまったのではなかろかと思った。

 するとスマホがポコポコと鳴った。私はこれはラインの通知音だなと思った。そこで、なんだね、誰からだね、とスマホを開いてみた。自分は首を前にだしてラインを開いた。それは友達からで「この動画見てみて」と何かのリンクが貼られていた。リンクを踏まずとも、「TVアニメ『おそ松さん』第3…」というところまでは読むことができた。

 

 

「アニメおそ松さん3期が決定したんだな」とこの時初めて気がついた。